2021年12月17日から22年1月16日までの1カ月間、「J-COLLABO」(米ニューヨーク市のブルックリン)で開催される大分県の竹藝家、こじまちからさんの個展「The Versatility of Bamboo in Artisanal Crafts」を担当させていただきました。
白を基調にした館内に、竹細工の装飾が美しいミラーやアクセサリーなどの小物や、竹の編み目の美しい幅1メートルほどの立体的なオブジェなど15作品を展示。訪れたニューヨーカーを「和」の世界に誘いました。
大分県は真竹の生産日本一を誇る竹工芸の産地で、良質な竹による伝統工芸が受け継がれています。中でも注目を集めたのが個性が光る3作品。
「竹のステアリング」は、実際に車に装着できる竹製のハンドル。「生活の中からもの作りのヒントを見出す」と話すこじまさんが、車の中で最も触れる部分を、色つやの美しい大分の竹の特徴を利用して製作。竹の節部分がデザインのアクセントになった斬新な作品です。
「大分の真竹と栃木レザーの名刺入れ」は、こじまさん自ら竹林で切り出した良質な大分県産の真竹を、一本一本手作業で極限まで細く薄く加工し、細かな竹の編み目模様を作っています。竹には塗装や染色が施されているものもあり、栃木県産の上質なレザーと共に素材の経年変化が楽しめます。オリジナリティーに富んだ一点物の名刺入れとして、特に海外での購入者が多い逸品。
「福の神×別府竹細工」は福岡県博多市の伝統工芸品「博多人形」とコラボレーションしたオブジェ。特殊な加工技術で木材のように着色加工した竹の台座と竹編みの座布団、背景には伝統的な六角の竹編み模様をあしらい、カラフルな竹で編まれた玉と共ににこじまさんが絵付したファンキーな博多人形が鎮座しています。
今回の展示の見どころは、どの作品も100%竹製ではなく、異素材との組み合わせによる作品ということ。伝統的な竹製品は多くの場合竹だけで成立するものが多いですが、今回の展示作品はすべて、様々な素材と伝統的な竹工芸技術のコラボレーション作となっています。
「竹のポテンシャルは高く、現代の技術では竹から紙、プラスチック、タオル、トイレットペーパーなどを作ることもできます。工芸の技術だけでなく〝素材の特徴・魅力をどこまで引き出せるか〟という課題に挑戦する日々です」とこじまさん。
「竹工芸界に新しい話題を創出し、盛り上げていきたい」と海外展開にも意欲的です。
国内でも竹細工の魅力普及に尽力
こじまさんは2018年、地元である大分県にオープン型のシェアアトリエスペース「synergiez(シナジーズ)」(別府市)も開業し、竹細工の魅力発信にも意欲的に取り組まれています。スペース内には竹工芸関連の機材だけでなく、レーザー加工機や3Dプリンターなどの現代の加工機械を幅広く常備。伝統工芸に触れたい人や「ものづくり」に挑戦したい誰もが使える場所として地元の人の作業場や、交流スペースとして開放されています。
「竹の魅力は素材として限界の深さと、そのものの美しさ。今後も人が楽しめるものを創出していきたい」と語るこじまさん。弊社でも彼の挑戦を今後もバックアップできたらと考えています。
・「synergiez」では事前予約で竹細工の体験が可能。観光で利用される方も多い人気スポットです