2018年10月12日から11月1日まで、RESOBOX East Village (レゾボックス イーストビレッジ店)で、「現代の名工」で「伝統工芸士」の曲げわっぱ職人・栗盛俊二さん(70)と、木工作家・橋野浩行さん(56)の作品展を開催しました。
ギャラリー内には、職人技が活きた曲げわっぱの弁当箱や櫛(くし)など、約70点の作品が並び、訪れたニューヨーカーらは実際に作品を手に取り、木の温かい質感や、繊細な木目の美しさを体感。自分用としてはもちろん、特別なプレゼントとして購入されていました。
日本を代表する秋田の名工・栗盛俊二さんと橋野浩行さん
今回展示会を開催したお二人は、日本国内でも有名なアーティスト。宮内庁の要請で作品を作られていたり、数多くのグッドデザイン賞受賞作品を手掛けられていたりと、長年の経験と培ってきた技術、使い手に寄り添っだデザインなどが、高く評価されているスペシャリストです。
まず、お二人についてご紹介。
栗盛俊二さんは、明治7年創業の秋田杉を使用して作る曲げわっぱの老舗「栗久」(秋田県大館市)の六代目。経済産業大臣指定伝統工芸士で、現代の名工にも選ばれた職人さんです。「曲げわっぱ」の歴史は古く、江戸時代に大館市領内の豊富な秋田杉を活用するために作られ始めたと言われています。
18点がグッドデザイン賞を受賞
制作方法は、薄く削った木材を煮沸して、熱いうちに型に合わせて曲げ、継ぎ目部分を接着して桜の皮で留め、底入れするなどして仕上げるというもの。仕上がった商品は、湿気を取ってくれる吸湿性が食べ物の腐敗を防ぎ、外気温に左右されない断熱性が、食べ物を美味しく保ってくれます。また、一枚の長い板を煮沸して曲げるため、木材で作った四角い入れ物と比べて10倍の強度があると言われています。ふたを開けるとふわっと優しい杉の香りが広がる、伝統の技と杉のぬくもりが詰まったお弁当箱は日本では定番の人気商品ですよね。栗盛さんは、曲げわっぱの技術を応用し、サラダボウルや器、ぐい呑セット、ワインクーラーなどさまざまな商品を制作し、18点がグッドデザイン賞を受賞されています。
宮内庁御用達の靴べらを制作
橋野浩行さんは、秋田県鹿角市を拠点に、斧折樺(おのおれかんば)という、堅くて木目の美しい希少な木材を使用し、家具や食器、雑貨などを制作する職人さんです。斧折樺特有の艶やかな木肌を生かし、極限まで使いやすさを追い求めたフォルムが高く評価され、国内外で人気に。代表的な作品である「靴べら・スタンドセット」は、宮内庁(天皇陛下)に納められていたり、頭の形に合わせ、滑らかなウェーブを再現した櫛「ひねり髪すき」がグッドデザイン賞を受賞されたりしています。
米国での活動は、2012年にNYハーレムのサクラパークに
後継者たちに挑戦し続ける面白さを届けたい!
ニューヨークでの作品展は「新しい表現に挑戦し、秋田の伝統工芸を世界に発信したい」「年齢に捉われず挑戦し続ける我々の姿を後継者たちに見せたい」「若い職人たちの目標となり、活力となることで業界を潤したい」という信念を持って開催されました。
ブルックリン・ブルワリーと曲げわっぱビアカップでコラボ
そんな中、今回RESOBOXと共に取り組んだのが米国有名企業との「コラボレーション」です。「曲げわっぱ」の日本でのブランド力は皆さんもご存知の通りですが、米国ではまだほとんど知られていないのが現状です。ブランド力向上のため、お二人と共に取り組みを行いました。
今回はその第一弾として米国人であれば誰もが知るビール醸造所「ブルックリン・ブルワリー」(米国)とコラボレーションが実現。「ブルックリン・ブルワリー」は、1988年に米ニューヨークで設立したクラフトビールのパイオニアで、欧米を中心に人気が高く、世界30 カ国以上で販売されています。
曲げわっぱの特長である保冷性と結露しにくい素材がビアカップに最適で、デザイン的にも機能的にも優れた商品が誕生。ビールを注ぐと秋田杉の木の香りがビールのテイストを引き立ててくれます。完成品には「ブルックリン・ブルワリー」のロゴマークを入れ、本展で初披露しました。
秋田ブランドを向上 世界へ発信
展示会では、ビールと共に展示された商品に、「あのブルックリン・ブルワリーとコラボしているんですね」と、注目を浴びました。今後も継続的にお二人が制作されているさまざまな商材でのコラボレーションにチャレンジしていきます。来年の展覧会で新たなコラボ作品も展示したいと考えておりますので楽しみにしていてくださいね。
日本の伝統工芸品を世界の日用品として根付かせたい
RESOBOXは「日本の伝統工芸品の品質や価値を浸透させることで、カタチを変えながらNYに留まらず海外の多くの人の日常に根付かせること」をモットーに掲げています。今回、その理念を共有し、一緒に実現するパートナーと出会い、その第一歩を踏み出す素晴らしい展示が開催できました。
足りないものを補う過程こそ 新しいアイデアの源に
工芸品の機械化が進み、表現したいものを簡単に再現できるようなりました。しかし「大切なのは表現したいものに辿り着くまでの工程」と、お二人がお話されていました。最新の高価な機械は使用せず、基本的な工具で商品を仕上げ、その過程の中で足りないものを補うために「想像力」「技術力」を磨く。その過程こそが、新しい発想の商品を生み出したり、力を高めることに繋がります。
RESOBOXは、今後も彼らのような熱い思いを持つ方々と一緒に世界へ挑戦したいと考えております。弊社のギャラリーは、訪れる人の99%が非日本人です。NYで商品を展開してみたい、伝統の技を披露してみたい方は、お声掛けください。
・弊社スペースでのイベント開催に興味がある方は、まずはご連絡下さい。https://resocreate.com/contact/
・過去開催のイベント一覧 https://resobox.com/event/
・「秋田の名工が木工品展」の展示を紹介した英語ページ https://resobox.com/exhibition/superior-woodcrafts-akita/
・栗盛俊二さんのHP http://www.kurikyu.jp/
・橋野浩行さんのHP http://www.artform.jp/f-home.htm